徒然の書

思い付くままを徒然に

剣とは、平常心とは、極意とは・・・・

 
本棚の書を探しているとき、必要な書はなかなか見つからず、
必要もない小さな本が間にはさまっているのが目に触れた。
武蔵が晩年に書いたと言われる五輪の書である。
これを初めて読んだのは、もう何十年も前の事である。
これを読んだとき、様々な事を思いながら読んでいたのだが、いまあらためて読み返してみると、当時に思ったことが、蘇ってきた。
 
剣の様々な流派が世に現れたのは、
戦国の世が終わって世が落ち着いた頃からが盛んになったのであろう。
それ以前にも、東国では上泉信綱や塚原朴伝、
更には伊東一刀斉などが世に知られた存在であった。
戦乱の世では入り乱れて殺しあう戦では、
剣術と言うべきものは必要なかったのかも知れない。
とは言っても其の時代でも、
剣を扱うことを模索していた人々は多く存在していたであろう。
かの有名な宮本武蔵なども関ヶ原の合戦を生き抜いた一人である。
だが、その頃の武蔵は世に云う剣術の流派とは、
全くの無関係な自己流の剣術であったろう。
二刀を使うようになったのは、
武蔵が言うように、道具を残さず役に立てたきもの、という考えから、
左右片手でも大刀を自由に使いこなせるようにした結果なのであろう。
様々な剣の戦いを得ながら剣の道を究めて行ったことだろう。
そのためには様々な剣者に挑んでいった前半生、
それが武蔵の生き様だったのだろう。
彼の二天一流なる剣法は、武蔵の体格や、その他、
剣術に必要とされる素質を見ると、
他のものには真似のできない術であったろう。
それ故、二天一流も武蔵一代で終わった。
継ぐのがあったとしても、
技量はとても二刀流を継承したと言えるべくもなかったであろう。
武蔵は弟子を選んだようであるが、
それでも武蔵に到達できるものは恐らく皆無。
武蔵ほどでなくとも、
世に出るほどの技量に到達できたものはいなかったろう。
二天一流は武蔵でなければ使えない流儀であったといえる。
晩年、武蔵は五輪の書なるものを書いてはいるが、あれは剣を志す者の心得に類するもので、二天一流の極意を伝えるものではない。
剣で著名になったもので、
家伝書みたいなものを書き記しているものもいるが、
それらは極意書ではない。
剣の極意を文字であらわすことは殆ど不可能であろう。
柳生の道統を継いだ石船斉の孫の平介なども極意は家伝書とは別に、
詳細は口伝によって受け継いでいる。
受け継いだ極意とは言っても、
それは石船斉が辿り着いた頂であって、剣の極意ではない。
 
剣の道はいかに理由を付けようとも人殺しの術であり、
剣は人殺しの道具でしかない。
それを繕うために剣による精神修養などと言うものを持ち出してきたのが、沢庵和尚に啓発された、剣禅一致を標榜する柳生宗矩の流派であろう。
江戸柳生の宗矩などは、術策に長けてはいたが、剣の業は道統を継いだ甥の平介すなわち兵庫介の足元にも及ばなかった様である。
 
ただ古武術では、単に道場の竹刀や木刀の稽古だけのもの、真剣を使うに慣れていないものは、真剣の勝負をしたものには到底太刀打ちできない。
木刀と真剣の違いは重さにあるのだが、
使うものの心の持ち方が全く違うし、
刀の伸びが全く違う。
武蔵が幾たびも試合をして生き抜いたのは、
初めからほとんどが真剣の勝負であったことである。
真剣勝負で、人を切ったことのあるものには、
道場の畳水練では太刀打ちできないと言う。
剣は如何に武士の魂などと言っても、
所詮は単なる言い訳、殺しの道具でしかない。
剣の極意などと言う者もいるが、剣の道は無限であり、一つの壁を超えると遥か彼方にもっと高い壁が待っている、その壁を超えるとさらに遠くには、更なる壁がある。
これは一生続くのである。
剣の道に到達などと言うことはありえない。
武士と言うものが消えて、剣の道もスポーツと化したが、
この道とても究めれば究めるほど行き着く先は見えない。
山の頂などは見えてこないと言っていいだろう。
これは何も剣に限ったことではなく、
我が国の古武術に付いてはすべてあてはまるであろう。
剣の道に能書きは一切いらない。
頭で考えて体を動かすのではなく、体が自然に動く、自然に体が反応する。
そうなって初めて、道らしきものが見えてくる。
これが古来からの武術である、いや、現今のスポーツであっても、
同じであろう。
体が自然に反応するのでなければ、何事にも太刀打ちできないであろう。
 
現代人の常で、孫子の兵法やこの五輪の書を有用に活用しようなどと、
一時は持て囃されたものだが、
どれほど理解し、活用したものがいただろうか、・・・・・
恐らく皆無・・・・・であったろう。
 
 
 
 
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