徒然の書

思い付くままを徒然に

トロイア戦争

 
つい最近、トロイと題する映画を見た。
トロイとギリシャの戦いの映画は過去沢山製作されているのだろうが、神話の解釈とか映画的面白さを出すために様々な工夫が凝らされるのだが、イリアスとは随分と違うところもある。
トロイア戦争については、ホメロスイリアスに書かれたものだが、このイリアスには現代のPCのウィルスでも有名なトロイの木馬については書かれていない。
イリアストロイアの英雄ヘクトルアキレウスとの戦いに敗れ、トロイの王プリアモスアキレウスに懇願して息子ヘクトルの遺体を返してもらった後、葬儀で、ヘクトルの遺体を火葬にするところで終わっている。
その時、アキレスは葬儀の間十二日間の休戦を約束する。
トロイの木馬について、現在体系的に書かれた古典は存在しないと言われている。
ホメロスオデッセイアにはほんの僅かに何か所かに、回想的なものとして書かれているぐらいである。
オデッセイアが戦争の終結後、故郷へ帰るための十年にも亘る放浪についての詩であり、トロイア戦争とは直接の関係はない。
 
トロイの木馬を知る人は多いが、この戦争の発端を知る人は多くはなかろう。
この戦争の発端はパリスという若造がスパルタ王の妻を寝取って、トロイアへ連れて行ったことなのだが、神話としては神々のいたずらから起こったことなのである。
そもそもの発端は智慧の女神であるアテナの不心得な思いから始まった。
アテナはヘラやアプロディティを相手に、美を競うとした。
ペレウステティスの結婚式の時、不仲な女神エリスだけを省いた。
怒ったエリスは黄金のリンゴを宴会の中へ投げ込んだ。
そのりんごには一番美しい方へと書かれていた。
そこで、ヘラ、アプロディティ、アテナの間でりんごの争奪戦がはいじまった。
ゼウスが困って三人をイデ山へ行かせたのだが、そこにパリスと言う羊飼いがいた。
三人はこのパリスに一番美しい女はだれかの判断を任せることにした。
それぞれパリスを買収しようとして、魅力的な条件を出すのだが、このパリス余程浮気性なのか、既に妻がいるにも拘らず、アプロディティの出した条件「世界一美しい女を妻にしてやろう」と言ったことを受けて、りんごをアプロディティにあたえる。
パリスはアプロディティと共にギリシャへ行って、スパルタのメネラオス王に快く迎えられた。
メネラオス王の妻ヘレネはアプロディティがパリスに宿世を定めた当の女であったから、話がややこしくなる。
ヘレネはメネラオスと幸福に暮らしていたのだが、アプロディティを後だてにしたパリスは難なくヘレネ口説き、己の国トロイへ連れて帰ってしまう。
このパリス、強欲なのか、財宝まで持ち去ってしまう。
メネラオスは兄のアガメムノンヘレネが独身時代に彼女に求婚したギリシャの族長たちを招集して以後十年に亘る消耗戦に突入することになる。
トロイ戦争の原因となったのであります。
 
ギリシャのほとんどが戦争に参加したのは、ヘレネに対するすべての迫害から彼女を守ると、求婚者一同の約束であった。
 
 
ここで、自分の生まれた国を滅亡に追い込んだパリスなるものの正体を見てみよう。
トロイアの王プリアモスとヘカベとの間に生まれた。
出生時の名前はアレクサンドロス、長兄にトロイアの英雄ヘクトル、妹に悲劇の予言者カッサンドラを持つ、トロイアの王子である。
アレクサンドロスを産むとき、ヘカベは、悪夢を見て、夢占い師にこの夢のことを告げると、この子は災厄の種になるとして、殺すことを勧めた。
そこで、プリアモスは家来に、アレクサンドロスを連れ出して殺すように命じたが、家来はアレクサンドロスを殺すにしのびず、イデ山に捨てた。
捨てられた子は、羊飼いに拾われて、彼からパリスと名付けられて育てられた。
この話の筋は世界の多くの物語で語られることが多い。
成長したパリスはニュンペのオイノネを妻とし、イデ山で羊飼いをしていた。
そこへ三人の女神が現れてパリスの審判と言うことになる。
後に、生まれた国を滅ぼし、捨てた妻にも見捨てられ命を落とすことになる。
女に狂った哀れな男の自業自得と言えるのだが、国を滅ぼし多くの英雄や幾万と幾十万ともしれぬ戦士の命を奪った、破滅的な男の引き起こしたトロイア戦争
 
たった一人の妄執が英雄を、多くの戦士を、有能な人間を、死に追いやり、国を滅亡させる。
現代に於いてもこの様な破滅的な行いをなした輩は存在し、多くの人々が不毛の争いに狩り出され、その命を失い、あるいは悲惨な人生を余儀なくされている。
古代トロイアのパリスは死んだが、現代の人間は己だけは安全な処で、のうのうとしている。
この様な輩は戦前の我が国にもいた。
多くの民を死へと追いやり、悲惨な人生を余儀なくさせている。
国を破滅へと導いた。
今後も出ないとは限らない。
 
トロイア戦争において、パリスは毒矢でアキレウスをしとめるなどしたが、しかし、ヘラクレスの弓を持つピロクテテスに弓で射られ瀕死の重傷を負う。
この傷を治せるのは、昔捨てたオイノネだけだった。
このためパリスはイデ山に行き、オイノネにすがるが拒絶され、トロイアに戻る途中で死んでしまった。
国を滅ぼす、発端を作ったパリスは死んで当然ではあるが、では、もう一方の共犯者ヘレネは如何したか。
この女ちゃっかり元の鞘のに収まって、子まで為している。
十年にも亘り、多くの人命を失い、多くの英雄を殺した戦争を引き起こしたものとしての悔悟や後ろめたさは感じなかったのであろうか。
女の強かさを見た様な気がする。
 
人間の歴史は殺戮の歴史と言えなくもない。
早くから文明の開けてきたところでは、紀元前何年も昔か争いが繰り広げられてきた。
我が国で戦争と言われるものが起こったのは弥生時代であったと言われている。
恐らくその頃、紀元前二、三世紀頃だろうか王権の形成を目指した争いであったのだろう。
 
 
このトロイア戦争は創作物と考えられていたようであるが、シュリーマンは少年の頃から、実在すると考えていたらしい。
発掘を夢見て、巨万の富を蓄え、少年の頃の夢を実現させた。
アナトリアのヒサルリクの丘を発掘し、そこがトロイアの遺跡で、このトロイア戦争ギリシャ神話として語られているが、これは実際にあったことであることをシュリーマンは実証している。
 
 
 
イメージ 1
 
 
(本ブログの全ての写真は著作権を留保。無断使用・転用・転載・複製を禁ず。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー