徒然の書

思い付くままを徒然に

ダンテ煉獄を行く

 
地獄を巡り、煉獄を辿ってきたが、以外と言うほかない奴が随分地獄や煉獄にうごめいてるなぁ~
キリスト教でも最高位に属する教皇などもこんなところに放り込まれているんだな~って、改めて驚かされるよ。
人間っていう奴は、権力を持つと何をしでかすか判らないな~って思うな。
 
ダンテ様ご一行、煉獄島にご到着~
エルサレムの丁度地球の裏側対極にある、南半球の孤島。
地獄ほどではないにしても、地上の楽園までの道のりは長い。
 
ヴィルリジオに助けられながら、どうにかこうにか漸く、煉獄の楽園にたどり着いた。
ところがところが、ダンテは思いもしない場面に出くわして、散々に絞られて、おろおろしてしまうなあ~
 
川の向こうに来たのは、はっきりとはせぬがヴェアトリーチェ・・
何やら盛んにダンテを責めている。
「どうしてお前はこの山へ来ることが出来たのですか」
「人はここでは幸せな事を知らなかったのですか」
私の答えは川向うで泣いているものに私の言葉を悟らせ罪に応じた悩みを抱かせる点にあるのです、などと言っている。
青春の盛りに大いなる可能性に恵まれました。
彼の優れた資質はことごとく立派な驚嘆すべき行為に具現化しえた態の物でした。
しかし土壌は力が盛んであればあるだけ、耕さず放置して悪い種をはびこらせると、一そう荒れ、一そう悪くなるものなのです。
一時私は私の表情で彼を支えました。
若々しい目を向けて私は彼を導いた。彼はその頃正道を進みました。
第二の齢の声を聞いたとき、世を変えました。
すると彼は私を捨ててよその人の許へ走ったのです。
私が肉体を捨てて魂となって天へ上り、美も徳も私のうち況して来たとき、彼はもはや私を愛さず、私を喜びとせず、凡そ約束を果たしたためしがない、善の虚像を追いかけて、正道を捨てました。
夢幻の中に現れて彼を呼び戻すために、神に霊感を乞いましたが無駄でした。
彼は堕落に堕落を重ねました。
救いの手段は破滅した人間を見せる以外に、もはやないと思われるほどでした。
もし彼が涙もこぼさず、前非も悔いず、負い目も清算せずにこの川を渡り、この水を味わう事が許されるならば、神の尊い摂理は破られたことになりましょう。
惚れた弱みで、溝だめの地獄を通って苦労して漸く、ここまで来たのに彼女の口から出る言葉はきついなあ~
心が萎えてしまうよ。
俺、遠くから眺めてただけで、彼女から何にも教わっちゃいないよな。
俺そんなに悪いことしてきたかなあ~
二度しか会ってないのに、それも遠くから見るくらい・・・・・・
私を捨ててよその人の許へ走った・・・・ああ俺結婚したこと怒ってんのか、お前だってさっさと結婚しちまったろうに。
天国に行っても女って嫉妬の炎ってすごいんだな~
 
生きてる頃より美しくなったし、何より俺惚れてるから、もう少し聞いてやろうか。
 
おお、お前、この清い川の向こう岸にいるお前。
さあ、さあ、これは事実ですか、返事をなさい、こう責められた以上、懺悔をしなければなりません。
何をしているのです。返事をなさい。お前の中にある悲しい記憶は未だ水で流されたわけではありません。
 
ダンテは混乱と恐怖がまじりあって、口からは「はい」という声が出たが、目で見なければわからない様な声であった。
この余りの重荷に耐えきれず涙と吐息が迸ったが、超えは喉の奥で敗れて、力なくかすれて消えた。
 
少しは恐れ入ったようにしないと何時まであたっても終わらないだろうな。
 
お前が愛するよう私の願いは途中で、お前があのようにして、先へ行く望みを絶ったのは一体如何なる濠、いかなる鎖に出合ったのか、またそれ以外の善の外見に如何なる利、いかなる益が示されて、お前の足や心をいざなったのですか。
 
それにしても、品性下劣などと言われて、窘められるような人生送ってたのかなあ~
そんな文句言われるほどの人生ではないと思うけどな。
懺悔をなさいと言われても、何を懺悔すればいいのか解らないな。
でも、懺悔するふりしなければ何時まで経っても終わりそうもないな。
 
惚れた弱みと言っても、いくら天国にいるとは言っても相手は亡者なんだぞ。
今更どうしようもない相手なんだ、・・・・・
 
お前は、私が死に体が埋められたために、逆の方へ行ってしまった。
私がその中にいた美しい肢体ほどお前の目を喜ばせたものは自然にも人工にもありませんでした。
その肢体はいまは大地へ塵となって散りました。
私が死に、それで至上のの喜びが脆くも崩れたというのなら、如何して儚い現世の他のものがお前の心を惹きえたのでしょうか。
まだ云ってるよ、何だかだんだんそんな気になってきてしまうなあ~
叱られた子供の様に押し黙って突っ立っていると・・・・
「耳がいたいならこちらをしっかりとみて、もっと後悔なさい」
 
チルダ夫人が川の中へ連れて行ってくれた。
 
天女たちが「ヴェアトリーチェよ清らかな目を彼にお向けください。お会いするために彼は健気にも長の旅路をはるばる超えて、ここまで来たのです、あなたの口からとばりを外し、どうぞ第二の美をお示しください」ととりなしてくれた。
あゝ~よかった。
 
第二の美、とはヴェアトリーチェの口、すなわち笑顔のことを言うらしい。
十年ぶりに彼女の笑顔を見るが、目がくらんでしまう。
 
九歳の時初めて出合った少女、その後も一度見かけたきり、二度しか見たことのない女への純愛とは・・・・・
それで、地獄の苦しい旅をして会いに来るかねえ~
散々に説教されて懺悔させられて、まあ~それでも満足だったのっだろう。
扨この後天国へ行ってどうなることやら。
 
 
参考
神曲煉獄編                      平川祐弘        河出文庫
やさしいダンテ新曲        阿刀田高        角川文庫
 
 
 
 
 
 
イメージ 1
 
 
(本ブログの全ての写真は著作権を留保。無断使用・転用・転載・複製を禁ず。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー